We will celebrate a new year.
「清麿。母上どの。明けましておめでとう、なのだ。」
「明けましておめでとう、ガッシュ、おふくろ。」
「おめでとう、清麿、ガッシュちゃん。」
TVに映っている芸能人が、新しい年が明けたことを告げた瞬間、
3人の晴れやかな声が一斉にあがった。
「・・・メル・・メル・・メ?」
こたつの側で丸まって眠っていたウマゴンが、ぼんやりと目を覚ましたが、
またすぐ心地良い眠りの世界へ旅立っていった。
「ウヌウ、ウマゴンはよっぽど疲れているのかのう?」
ウマゴンの顔をそっと覗き込んだガッシュの声は、何故か嬉しそうだ。
「そうだろうな。夕方まで、ずっと遊んでいたんだろう?」
「そうなのだ!楽しかったぞ!」
普段であればこんな遅い時間には起きていないガッシュだったが、
大晦日の夜には遅くまで起き、除夜の鐘を聞き年越し蕎麦を食べながら
新年を迎えることを12月の上旬から心待ちにしていたのだ。
そのためか、深夜でも元気いっぱいである。
新しい年が明けて、早くも30分近くが過ぎた頃。
「ガッシュ、そろそろ眠るぞ。」
清麿はこたつから立ち上がり、一つ伸びをした。
「ウヌウ、もうそんな時間かの?」
新しい年を迎えたことがよほど嬉しかったらしく、ガッシュは名残惜し気な視線を
TVから掛け時計に移した。
「もう少しだけ、起きていてはダメ、かのう?」
こたつから離れようとしないガッシュは、清麿を見上げる。
「ダメだ。」
清麿、一刀両断。
「ヌオーッ!!もう少し考えてくれても良いではないかーっ!?」
両腕を突き上げて、ガッシュはじたばたした。
「私だって、たまには夜更かしというものをしてみたいのだ!今日くらい良いではないか!」
「・・・あのなぁ、・・・ガッシュ・・・。」
大げさに溜息をつき、清麿は腰を落としてガッシュの目線に合わせた。
「今日、どこに行くのか、忘れたのか?」
「・・・・・・・・・・あ!!」
「ガッシュちゃん、今日はティオちゃん達と初詣に行くのよね?」
それまで、にこにこと嬉しそうに清麿とガッシュのやりとりを見守り続けていた華が、
この時ようやく口を挟んだ。
「・・・そ、そうであった・・・。」
「約束の時間は、確か10時だったわよね?」
「ウヌ・・・・・。」
「もし遅れたりしたら、ティオちゃん達を待たせちゃうわよね?」
「・・・・・ウヌゥ。」
「わかったらガッシュちゃん、そろそろお休みなさいな。」
ガッシュの頭を優しく撫でながら、華がふんわりと微笑んだ。
「・・・・母上どの、わかったのだ。今日はもう休むのだ。」
「よろしい。」
ガッシュも華には、あまり我が儘を言いたくないらしく、おとなしく華に従った。
「サンキュー、おふくろ。」
「どういたしまして。清麿も、寝過ごしちゃダメよ?」
「あぁ、わかってるよ。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさいなのだ。」
「はい、おやすみなさい。良い夢を見るのよ。」
居間を離れる清麿とガッシュを、こぼれるような笑顔で見送る華。
(ふふ、ガッシュちゃんがうちに来てから、賑やかになって楽しいわ・・・。)
大小様々なトラブルはあれど、毎日が楽しくて仕方がないらしい。
こたつの上に載っていたみかんを片付け、華はつけっ放しだったテレビを消すため、
リモコンに手を伸ばした。
午前8時。
快晴。
空模様だけ見ると、とても冬とは思えないくらい、からりと晴れ渡っている。
「母上どの、おはようございますなのだ。」
「おふくろ、おはよう。」
「おはよう、清麿。ガッシュちゃん。」
寝ぼけ眼で階段を下りてくる二人の子供に、華はいつもと変わらない優しい笑顔を見せた。
こたつのうえには、既に華特製のおせち料理とお雑煮が並んでいた。
「ウヌゥ、美味しそうなのだ。」
「ありがとうガッシュちゃん。お雑煮が冷めないうちに、食べましょうね。」
「そうだな。じゃ、早速・・・。」
「「「いただきます。」」なのだ。」
「ふふ、よく似合うわよ、ガッシュちゃん。」
「ウヌゥ、ちょっと、窮屈だのう。」
「ごはん食べたばかりだから、ちょっと苦しいのかもね。」
せっかく初詣に行くのだから・・・と、華がガッシュに手際良く袴を着せている。
もちろん、清麿にも着せようとしているのだ。
「おふくろ、俺は別にいいって・・・。」
「何言ってるの!せっかくのお正月なんだからビシッとしなさい。
こんな時くらいしか、着る機会がないんだから。」
「いや、だからって・・・。」
「はい、ガッシュちゃん、出来たわよ。
ほら清麿、早くこっちに来なさい。」
「・・・・・・わかったよ・・・。」
有無を言わせぬ迫力を華に感じたのか、清麿は観念して華に従った。
「そろそろ時間だな・・・。じゃあおふくろ、行ってくるよ。
ほらガッシュ、行くぞ。」
「ウヌ。では母上、行ってくるのだ。」
「行ってらっしゃい。二人とも、車に気をつけるのよ。
それから清麿、、お財布を落としたりしないようにね。」
「あぁ、わかってる。」
「ガッシュちゃん、迷子にならないようにね。」
「わかっているのだ、母上どの。」
華に向かって、いつまでも手を振っているガッシュ。
そのガッシュが塀などにぶつからないようフォローする清麿。
華は2人の姿が見えなくなるまで、後ろ姿を見送った。
ウマゴンは、自分の家ですやすやと眠っている。
表情が緩んでいるから、きっと良い夢を見ているのだろう。
ふと、華は空を見上げ、幸せそうに目を細めて呟いた。
「きっと、今年も良い年になるわ・・・。」
2004年も、良い年でありますように。
End