accarezzando
「うわあ、これが雪・・・っていうんですか!?」
灰色の空から舞い降りる、白く冷たい粒。
寒そうに身を竦ませながらも、シルベストリはにこにこと嬉しそうに空を見上げる。
背後でシルベストリの気配が消え、トロイが振り返ると、シルベストリは広場の真ん中で
天を仰いだままだ。
まるで、祝福の光を一身に受けているようにも見える。
・・・こんな北の果てまで、たった2人で当ての無い旅をしているというのに。
その様子を、目を細めて見つめていたが、本来ならばそろそろ日が暮れる時刻。
肌を刺すような寒さは厳しくなる一方だ。
「・・・そろそろ戻るぞ。」
いつまでも視線を下ろそうとしないシルベストリに呼びかける。
「え・・・?でもこんなに綺麗なのに・・・。」
髪に降り積もった雪が、はらはらと舞い落ちる。
「窓の外からでも雪は見られる。」
「うー・・・でも、せっかく初めて見る雪だから、もう少しこうしていたいです。」
名残惜しそうな声につい心を動かされそうになったが、
踵を返しつかつかと歩み寄り、革の手袋を右側だけ外す。
首を傾げながら見つめてくる蒼の瞳に、一つ苦笑いして返しながらそっと頬に触れる。
「・・・暖かいですね。」
そっと瞳を閉じ、手のひらから伝わる温もりにほっと息をつく。
自分の頬に触れるトロイの手を離さぬよう、手袋をしたまま己の手を重ねる。
「帰るぞ。」
「・・・はい。」
今度は、素直に頷いた。
手袋を填め直すトロイに、
「手・・・繋いでも良いですか?」
と、恐る恐る声をかけると、トロイは答えの代わりにそっと手を差し出した。
「ありがとうございます。」
手袋越しに伝わる互いの温もりを逃さないよう、しっかりと繋がれる。
見上げてくる瞳にそっと笑顔を返し、2人家路へ向かう。
今、このひとときが幸せでありますように。
Fine