bellino
「ただいま。」
人形やおもちゃの乗り物で遊んでいたレイラが動きを止め、顔を上げる。
玄関口には、頭に真っ白な雪を積もらせたアルベールの姿が。
「お帰りなさい、アル。・・・凄い雪ね。ちょっと待ってて。」
アルベールが両手に持っていた鞄や荷物を奪い取り、居間へ向かってぱたぱたと駆け出し、
大きなバスタオルを抱えて戻ってくる。
椅子を引きずり、ぴょこんと飛び乗って、ようやく身長がアルベールの肩に並ぶ。
「良いよ・・・自分でやるから。」
レイラからバスタオルを受け取ろうと手を差し出すが、レイラは応じない。
「よいしょ、よいしょ・・・。」
一生懸命背を伸ばし、アルベールの頭に積もった雪払い落とす。
そして、わしゃわしゃとバスタオルでアルベールの髪から水分を拭き取る。
「・・・サンキュ。」
「どういたしまして。」
控えめな笑顔は、それでも嬉しさを押さえきれないようだった。
「さあ、アル。まずは暖まって。」
椅子から飛び降り、アルベールの膝に捉まり、居間へと導く。
暖炉の前にクッションを置いて座るよう促すと、アルベールは大人しく従う。
「今日は、学校でどんなことがあったの?」
「ああ・・・特に変わったことは無いな。ま、今日はクリスマスだからみんな浮かれてたくらいかな。」
「そう。クリスマスって・・・本で読んだけど、どうして神様の降誕祭でみんな浮かれているの?」
「キリストの降誕祭・・・確かにそうだよな。
といっても、今となっては家族や恋人のイベントみたいになっちまってるからな。」
「そうなの・・・?」
「だから、おもちゃ屋では『お子様へのプレゼントは如何ですか?』って大々的にセールやってるし、
ケーキ屋はクリスマスケーキを売るのに大騒ぎだし・・・。」
「ふうん・・・。」
レイラは微かに首を傾げる。さら・・・と菫色の髪が揺れる。
「ま、べつ別に俺としてはどうでも良いかな・・・って思ってたんだけど。」
そう言って、さっきレイラが奪い取った荷物を指差す。
「・・・?」
「ささやかだけど、俺達なりにクリスマスを祝おうぜ。」
「アル・・・・・?」
「まあ・・・俺にとってレイラは家族みたいなもんだし。柄じゃねえけど、こういうのも良いかなって・・・。」
「アル・・・私そんなに子供じゃないわよ?」
「悪かったな・・・どうせ俺の方が子供だよ。」
拗ねたようにそっぽを向くが、それがわざとだということを、レイラは知っている。
「ふふ・・・でも、こういうのも悪くはないわね。」
「・・・・・だろ?」
「うん。」
レイラはアルベールに寄り添い、子猫のように頬をすり寄せる。
レイラの髪をそっと撫で、アルベールは視線を燃えさかる暖炉の火に向けた。
穏やかに、緩やかに過ぎていく時間。
この時間が、2人にとって何物にも代え難い宝物。
例え・・・限られた僅かな時間だとしても。
Fine