カタカタ・・・。
キーボードを叩く軽快な音が、シンとした部屋に響き渡る。
怪しげな通販のページを見るのは心が躍る。
今は誰も邪魔しには来ない・・・。
「チビ人間。」
・・・あの性悪人形。
いい加減その呼び方は止めろよ。
せっかくの楽しい時間が台無しだ。
「・・・チビ人間。」
あーうるさい。
こうなりゃ無視だ、無視。
「いい加減、気付きやがれですぅ、このチビ人間!」
ブンッ!!
コツッ!
「痛っ!」
怒りのあまり椅子ごと振り返る。
「こ、このっ!何しやがるんだ性悪人形!!」
「お前が無視するから悪いですぅ。」
視線の先には、ドアの前でぷりぷりと怒っている翠星石が。
「3時のお茶の用意ができたから、この翠星石がわざわざ呼びに来てやったですのに、
チビ人間ときたら無視しやがるです。お前なんかに翠星石が作ったクッキーはあげないですよ。」
「お前こそ、いい加減その呼び方は止めろよな!」
ふと足元を見ると、先程翠星石が投げたと思しき物が転がっている。
銀色の包み紙にくるまれたキャンディーが。
「・・・こうやって、物投げつけるのも止めろよ。」
「う・・・うるさいですぅ。とっとと来やがれですぅ。」
「・・・ちぇっ、しょーがないなぁ・・・。」
これ以上つまらないケンカを続けるのも気分が悪いだけなので、
渋々翠星石に従うことにした。
階段を下りようとしたところで、翠星石がジーンズの裾を引っ張ってくる。
「・・・何だよ?」
「罰として、翠星石を下まで連れて行くですよ。」
「はぁ?何言ってんだお前?」
「つべこべ言うなです。さっさとしないと、お前だけお菓子抜きの刑ですぅ。」
・・・はぁ、全く。真紅といいこいつといい・・・。
仕方がないので、両手で翠星石を抱え上げようと手を差し出すが。
「・・・あ、ちょっと待つです。」
「な、何だよ?」
翠星石は両手を伸ばし、労るようにジュンの左手に触れる。
今ではすっかりばかでかくなった薔薇の指輪が填められている左手に。
「・・・お前はこの翠星石のマスターでもあるのですから、ちゃんと翠星石も守るですよ?」
「な、何だよいきなり。」
繋がれた手にほんのりと熱が隠る。
「翠星石はジュンのことを守るですから、ジュンも真紅だけじゃなくてちゃんと翠星石のことも守るですよ?」
「ああ、わかったよ。」
・・・全く、これじゃどっちが『マスター』なんだか解りゃしない。
そうは思ったが口にすることを止め、翠星石を抱え上げる。
「わぁ・・・ちょっと高いですぅ。」
きょろきょろと翠星石が周囲を見渡す。
「落ちないようにしっかり捉まってろよ。」
「はいですぅ。」
シャツにしがみつきながらも翠星石は嬉しそうだ。
「これから、こうしてジュンにあちこち連れてってもらうですぅ。」
「・・こ、このっ!図に乗るなよ性悪人形!」
「何言ってるですか、このチビ人間!!」
結局リビングに辿り着くまで、2人の口ゲンカは終わらなかった・・・。
HAPPY END?
タイトルは、
「実験的お題の箱庭。」様から。