04:バンドエイド





「清麿・・・痛むか?」
「いや。この程度なら、大したことは無い。」
清麿の負傷した左腕を心配そうに覗き込むガッシュの眼前で、
清麿は右手と口を使って器用に包帯を巻いていく。


千年に一度人間界で行われる、魔界の王を決める闘い。
人間界に送り込まれた100人の「魔物の子」は、既に40名を切っている。
自分の本を燃やされたら王たる資格を失う上に、魔界へ戻らなければならない。
生き残りを賭けた闘いは、次第に熾烈を極めていった。


今回も、ガッシュの赤い魔本を狙った魔物と戦ったばかりだ。

孔雀に似た魔物は、空中から羽を凶器として二人に襲いかかってきた。
ガッシュと清麿の連係プレーで、何とか山吹色の魔本を燃やすことは出来たが、
敵の素早い動きと迅速な攻撃により、二人とも傷だらけになってしまった。
身体が丈夫なガッシュは傷の回復が早いのだが、本の所有者であり、
ガッシュのパートナーでもある人間の清麿にとっては、決して楽なことではない。
場合によっては、単なる怪我だけでは済まされないことだってあるのだ。


ガッシュのパートナーとして闘うことを決めた時から、
清麿は常に救急グッズを携帯するようになった。
少しでも早く怪我を回復させるためである。
敵は、いつ襲撃してくるのかわからないのだから。


闘いで相当疲労しているはずなのに、清麿はてきぱきと応急処置を施した。
「ま、こんなもんか・・・。さ、ガッシュ、帰るぞ。」
廃ビルの壁に寄り掛かりつつ立ち上がる清麿の顔に視線を移したガッシュが、
ふと何かに気付いたのか、丸い瞳を凝らして一点を見つめている。
「どうした、ガッシュ?俺の顔に何か付いてるのか?」
「ウヌウ・・・?清麿、少し待つのだ。
バンソーコーというものを私に貸すのだ。」
「絆創膏?・・・・ああ。ほら。」
清麿は鞄からバンドエイドを一枚取りだし、ガッシュに手渡す。
ガッシュは、ぎこちない手つきでバンドエイドの包みを剥がし、
必死の形相で清麿を見上げた。
「清麿!もう一度座ってくれぬかの?」
「あ?ああ・・・。」
ガッシュの迫力に押される形で、言われるまま、再び腰を下ろすと。
ガッシュは清麿の頬に、バンドエイドを貼り付けた。
「何だ?こんなところにも傷があったのか・・・?」
貼られた絆創膏を、指先でなぞる。
「鏡でも無ければ、・・・自分の顔は見えぬからの。」
「・・・それもそうだな・・・。」
本当は、特に絆創膏を貼る程の傷ではなかったのだが、
今にも血が滲み出てきそうなその傷を見つけた時、
ガッシュはいたたまれなくなり、せめて頬の傷を隠してしまいたくなった。
「・・・清麿・・・。」
「・・・どうした?」
ガッシュは清麿から視線を外し、沈む夕日に目を向けた。
「私は・・・もっと強くなりたい。
清麿に此処までの怪我をさせぬ位に、強くなりたいのだ・・・。」
強くなりたい。
心優しい魔物の少女コルルとの別れで、ガッシュの心に芽生えた強い感情。
そしてそれは、パートナーである清麿も同じだった。
「優しい王様になるために、・・・な?」
ぽん、とガッシュの頭に触れ、笑顔で応える清麿。
「ウヌ!!私は、強くなるのだ!清麿や、コルル・・・皆のために。」
清麿を見上げるガッシュの瞳には、決意にあふれる強い光が宿っている。
清麿はガッシュの頭を軽く撫でると、再び立ち上がった。
「さぁ、帰るぞガッシュ。そろそろお袋が心配するからな。」
「ウヌ!母上殿のごはんが待っているのだ!
晩ご飯にブリが出てくると良いのだがのう。」
嬉々として帰り道を急ぐガッシュの背に、清麿がぽつりと呟いた。
「・・・・・・・・・・そいつはどうかな・・・?」



END


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