悲劇は、繰り返す。





「俺が何故ここへ来たか、その理由はわかっているな。」



いつものように、いつもの如く。
ゴリガン相手に練習試合をするべく、平穏な田舎村デュナンへ向かった日のこと。
これまではネイティオとゴリガンの奇妙な2人(!?)旅であったが、クレイトスのコロシアムで再会したセレナとレオが
同行を申し出たので、今では騒々しくも楽しい旅となっている。
「意外と、ゴリガンとの練習試合では良いカードをゲットできるんだよな〜。」
という理由で、旅の合間にちょくちょくデュナンへ立ち寄っては、ゴリガンを相手に修行とカード集めに勤しんでいる、
ネイティオであった。
当然、相手がゴリガンであっても、全く遠慮も容赦も無いネイティオだった。
「いぢめですじゃぁ〜!!!」というゴリガンの悲痛の叫び(!?)は、全く聞こえない振りをして。

そんな時、突然聞いたことの無い男の声が響き渡った。


「え・・・えっ?何、何?誰かいるの??」
「・・・何者だ・・・!?」
セレナとレオが周囲へ視線を巡られた時。
「・・・はぁ、とうとう来てしまいましたか・・・・あの男が・・・。」
しおしおと髭を垂らし背を丸めながら、溜息とともに呟いたのはゴリガンだった。
「何か言ったかい、ゴリガン?」
自分の側で縮こまっているゴリガンを不思議そうにネイティオが見おろす。
そんな彼らの前に姿を現したのは、鋭い瞳を持ったセプター。
左目は、人間のそれと異なる独特の・・・竜の瞳。
彼から滲み出る雰囲気は、その辺の只のセプターとは異なる。
荒々しくも、そこはかとなく漂う威圧感は、人間である以上のものを、彼に抱かせる。
「あんた・・・誰だい?」
警戒心は抱いても、それを決して表に出さないネイティオ。
飄々と問いかける口調だけ聞いていると、この男は本当に数々の戦いをくぐり抜けてきたセプターなんだろうか・・・
と疑いたくなる。
一方、レオは警戒心バリバリで、今にも大剣を抜きかねない勢いだ。
ゴリガンは、これから起こる出来事を完全に予想できているのか、丸めた背をそのままに、
突然現れた男を恨めしそうに見つめるだけだ。
セレナは先程までの警戒心はどこへやら、「ちょっとカッコイイかも・・・。」と呟く始末。
四者四様の視線を全く気にしていない竜眼の男は、射るような瞳をネイティオに向けた。
「ネイティオ・・・どうやら貴様は覇者となる資格を持つセプターらしい。」
「・・・・・はあ?」
ゴリガンの只ならぬ様子からきっと何かあるのだろうと予想は出来ても、見知らぬ男に突然
「覇者となる資格を持つ」などと言われたら、誰だって驚く。
クレイトスのコロシアムでも、同様のことは言われたが・・・。
・・・ネイティオにとって、それは思い出すだけでも忌々しい出来事。
間の抜けた返事の後に苦々しく蘇る、憎むべきあの男の高慢な態度。
自分の生まれ育った国に戦争を仕掛け、両親を死に追いやった原因を作った男。
ほんの一瞬、俯いて唇を噛みしめたが、すぐに顔を上げて竜眼の男を見返す。
その表情には、既に曇りも陰も無い。
「・・・覇者の・・・資格ねぇ・・・。」
さして興味も無さそうに、ネイティオは肩を竦めて見せた。
「・・・・・ネイティオ・・・全く、何故俺はこうも、ネイティオという名に縁があるのか・・・。」
「?」
ぼそりと呟いた男の声に、首を傾げる。
この名前って、そんなによく聞く名前だったっけ・・・?
「この、ネイティオ殿もお強いですぞ。ゼネス、お主でも勝つのは難しいぞ。」
「うるさい。」
急に背筋をシャキーンと伸ばし、勝ち誇ったような口調になったゴリガンを、ゼネスと呼ばれた男はキッと睨み付ける。
「何せ、このネイティオ殿は私と旅を続けてから連戦連勝、一度も負けた姿を見たことがない。
かつてリュエード世界で共に旅をしたネイティオ殿に、名前だけではなくその実力までよぉーく似ておる。」
「・・・・ふん。」
「何だよ、ゴリガン?前に話してた、昔一緒に旅したセプターって、俺と同じ名前だったのか?」
「おぉ、そういえば、ネイティオ殿に名前まではお話ししておりませなんだ。
いかにも、リュエードで私が旅のお供をし、現在は遙か遠くの世界ネイビスの神となっておられる、
そのお方の名もあなたと同じネイティオと言うのですぞ!!」
「すっごーい!!ネイティオって、他の世界の神様と同じ名前なんだー!!」
「ふうん・・・さすがだな・・・・・。」
何がさすがなのかわからないが、セレナとレオに納得したように見つめられ、ネイティオは困惑した。
セレナに至っては、瞳をきらきらと輝かせている。
「はぁ〜・・・そうなんだ。」
ネイティオとしては、ただそう呟くしかない。
自分が生きている場所とは異なる世界の神様の名が、自分と同じだからとはいえ、
そんなこと自分にはあまり関係ないのでは・・・。
ゴリガンはその瞳を遙か遠くに向け、懐かしそうに語り始めた。
しかし、ゴリガンがその「神様ネイティオ」の話を始めた途端、竜眼の男・・・ゼネスの機嫌が
みるみる悪くなっていってるのがわかる。
「今となってはネイビス世界の神となっておられるネイティオ殿は、穏やかな表情の中に底知れぬ強さを秘めておられるが、
こちらの世界のネイティオ殿は太陽のような明るさと力強さに満ちておる。
セプターとしての実力は、互角と言って良いでしょうな。
まぁ、いかに『覇者たる資格を持つセプターを試す役割』を得ているとはいえ、
お主ではこちらのネイティオ殿にも勝つことは出来ぬよ。」
「・・・うるさいっ!!」
ゴリガンは何故かネイティオ以外の人間には冷たく、厳しい言葉を投げつけることが良くある。
今では、ヤバイくらいにゴリガンは饒舌だ。
一方のゼネスは、わなわなと震えている。
もちろん・・・・・・怒りのあまり、である。
最初に姿を現した時に感じた威圧感は、既に跡形も無い。
「ゴ・・・ゴリガン・・・・煽るの、やめてくれないか・・・・・?」
ゴリガンの口撃がまた始まったと気付いたネイティオが、慌てて止めに入るが、既に遅かった。
「勝負だ、ネイティオ!貴様が覇者たる資格を持つセプターかどうか、試してやる!!」
息巻くゼネスが早口でまくし立てた。
「・・・・・・・・また始まったよ・・・。」
肩を落として溜息をひとつ。
こんな事が、これまで何度有っただろう。
ゴリガンの要らぬ一言で、ネイティオはこれまで余計な敵を作ってきた・・・と言うか、作らされてきた。
最たる例が、ダムウッドの森に巣くう盗賊団の首領、ザゴルである。
ゴリガンの余計な一言・・・いや三言が無ければ、あの男もあそこまで執拗に
ネイティオを付け狙ったりはしなかっただろうに・・・・・。
「やれやれ・・・。」
渋々、ネイティオはブックに手を伸ばした。


ゼネスとネイティオの戦いは熾烈を極めた。
お互い好戦的な性格だからか、クリーチャー同士の戦闘が絶えなかった。
互いにクリーチャーとアイテム、魔力が尽きるまで戦い抜いた。



「やったわ、ネイティオ!!」
「さすがだな・・・。」
「お見事ですぞ、ネイティオ殿!!」
仲間達の歓喜の声に、ネイティオは迎えられた。
「ネイティオ・・・なかなかやる・・・。」
「あんたこそ。こんなに消耗する戦いは初めてだよ。」
ネイティオの言葉に嘘は無い。
これまで多くのセプターと戦ってきたが、ゼネス程執拗に戦闘を仕掛けてくるセプターはいなかった。
ダメージスペルの数もハンパではなかったので、自分の領地を守ることに相当神経も使った。
「この世界での俺の役割は終わったが・・・貴様が望むなら、また勝負をしてやっても良い。」
・・・・・負けた割には高慢な。
「そうだな・・・あんたとの勝負は色々勉強になるからな。」
根っからの勝負好きなネイティオにとっては、申し分のない対戦相手のようだ。
「俺はここにいるから・・・気が向いた時に、また来ることだな。」
「ああ、わかったよ。」
「ちょっとちょっと・・・何か妙に気が合っていない?あの二人??」
「・・・・どっちも戦闘好きだからかな?」
自分のことは棚に上げて、生真面目にレオが答える。
「ふふん、これで、再び『ゼネス負け負け伝説』の幕が上がったわけじゃな。」
「やかましいっ!!!」
「ゴリガン・・・頼むから余計なこと言うなよ・・・・・・。」



こうして、ゼネスはソルタリアに留まり、ネイティオ相手に連敗記録を更新するのであった・・・・・・。




End


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