無敵への第?歩





ダバダバダ〜
ダバダバダ〜

テ〜ン!


ブラウン管に映るのは、軽快なダンスと共に笑顔を振りまき陽気に歌う、
イタリアの俳優・絶世の美男子・イタリアの英雄と呼ばれる、パルコ・フォルゴレ。


「はぁ〜・・・・・。」
テレビに向かって正座しながら、
キャンチョメは深い溜息をついた。

「フォルゴレはやっぱり格好いいなぁ・・・。
僕もフォルゴレみたいに強くてカッコイイ男になりたいなぁ・・・。」

千年に一度行われる、魔界の王を決める戦い。
人間界のイタリアという国に飛ばされたキャンチョメは、
知らない土地へやってきたという不安に怯え、大好きなお菓子がポケットの中に
入っていなかったため空腹にも苛まれていた。
降りしきる雨の中、膝を抱えたままビルの壁に寄り掛かっていたキャンチョメを、
最初に見つけてくれたのが、フォルゴレだった。
キャンチョメの大好きな、キャンディーを差し出してくれた。


この日から、2人は、魔界の王を目指すためパートナーとなった。



フォルゴレが番組収録のためTV局へ出かけているため、フォルゴレの住む
マンションには、今はキャンチョメ一人。
フォルゴレが出演するTVは、キャンチョメは欠かさずチェックを入れる。

「・・・そういえば、前にフォルゴレに無理言って連れてってもらった日本で、
僕はガッシュに負けたんだ・・・・・。」
ブラウン管を睨み付けたまま、キャンチョメは握りこぶしを固めたまま、呟いた。
TVでは、番組の司会者がフォルゴレに2・3質問をしていた。
その様子をぼんやり眺めながら、キャンチョメは考えを巡らせていた。

「僕は、このままじゃ、いけないんだ。強く・・・強くならなくちゃ・・・。
フォルゴレのような、強くてカッコイイ王様に・・・なるんだ!」
フォルゴレは、いつだって、どんな時だって強い。
ならば、パートナーとなった自分だって、強くならなくちゃ。
キャンチョメは立ち上がって、TVのリモコンを手にした。
ブラウン管には既にフォルゴレの姿は無く、イタリアのアイドルグループが
歌の準備を始めていた。
TVの電源をオフにして、キャンチョメは部屋を見回した。
その視線の先にあるのは、円筒形の超ロング枕。
キャンチョメが、昼寝の時に好んで使っている枕だ。
「・・・よ〜し!!やるぞぉ〜!!」
キャンチョメの瞳は、炎の如く、燃えていた。


「・・・ふっ、すっかり遅くなってしまったな。
キャンチョメ、お腹を空かせているだろうな。」
両手にあふれんばかりの花束と箱を抱えながら、フォルゴレは自室の鍵を器用に探した。
花束と箱を落とさぬよう、注意深く部屋の鍵を開ける。
「ただいま〜キャンチョ・・・メ・・・?」
見慣れたはずの自分の居間に、見慣れない物がぶら下がっている。
危うく、フォルゴレは両手に抱えた箱やら花束やらを落としそうになった。
「あ、ふぉ、フォルゴレ・・・お帰り・・なさい。」
その見慣れない物の側には、汗を滴らせ、肩で息をしているキャンチョメ。
「ど、どうしたんだい、キャンチョメ?」
フォルゴレはキャンチョメから視線を離さずに、テーブルに箱と花束を置いた。
「・・と、特訓だよ、特・・・・訓!!」
ぜえぜえと肩で息をし、キャンチョメがとても苦しそうに見えるが、それでも顔は笑っている。
キャンチョメの昼寝用に買った超ロング枕が、所々綻んでいる。
「もしかして・・・サンドバッグのつもりかい?」
「う、うん・・・。ごめんねフォルゴレ、せっかく買ってくれた枕なのに。」
「いや、それは構わないんだが・・・、一体どうしたんだい?」
フォルゴレは冷蔵庫からミルクを取り出し、コップに注いでキャンチョメに手渡す。
「・・・うん。」
両手でコップを受け取って、キャンチョメは冷えたミルクをごくごくと飲み始めた。
「・・・ぷはぁ。」
喉が渇いていたのか、キャンチョメはミルクを一気に飲み干した。
「あのね、フォルゴレ・・・。僕は、・・・今のままではいけないんだ。
魔界の王様になるには、フォルゴレみたいに、もっと強くて、かっこよくならなくちゃ。
今のままじゃ・・・ガッシュにさえ勝てない今の僕では、
絶対に王様になんかなれっこないよ。
ルシカだって、守れやしない・・・。」
コップを持ったまま、淡々とキャンチョメは話す。
フォルゴレは、黙ってキャンチョメの話を聞いていた。
「だから、だからね、特訓して、強くなろうって決めたんだ。」
「・・・そうだったのか。」
フォルゴレの声に、怒りは、無い。
キャンチョメの、強くなりたいという強い意志を、フォルゴレは受け取ったのだ。
「・・・フォルゴレ・・・怒ってないの?」
フォルゴレが買ってくれた枕をぼろぼろにしたので、きっとフォルゴレは
怒ってるかもしれないと、一抹の不安がキャンチョメを襲った。
恐る恐る、キャンチョメはフォルゴレを見上げたが。
「バカだなぁ。何故私が怒るんだい?」
フォルゴレは柔らかく微笑んだ。
彼のファンが見たら、黄色い歓声をあげ卒倒するであろう、極上の微笑み。
「日々努力することは大切だ。その心意気を、忘れてはいけないよ、キャンチョメ。」
「フォルゴレ・・・?」
「今日はよく頑張ったな、キャンチョメ。」
キャンチョメの小さな肩をぽんと叩いて、フォルゴレは微笑む。
「あ、ありがとう!フォルゴレ!!」
ぱあっと、キャンチョメの顔に笑みが戻った。
「さあ、キャンチョメ。体を動かした後は、クーリングダウンを忘れてはいけないよ。
私と一緒にダンスをしようじゃないか!」
「うん!!」


ダバダバダ〜
ダバダバダ〜

テ〜ン!

軽くステップを踏み、楽しそうに踊る2人。

「そういえば、キャンチョメ。私は以前キャンチョメに教えてもらったことがあるんだぞ。」
「えっ?僕が、フォルゴレに、・・・教えた?」
「そうだ。どんな時でも、決して諦めてはいけない・・・ということだ。」
「フォルゴレ・・・。」
「頑張って、・・・王様になろう、キャンチョメ!!」
「うん!!フォルゴレ・・・、僕頑張るよ!!」
「はっはっは、その意気だぞ、キャンチョメ!」
「うん!!」


ダバダバダ〜
ダバダバダ〜

テ〜ン!!

今宵も、フォルゴレのマンションからは、陽気な歌と音楽が聞こえてきました、とさ。



END


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