旅は道連れ?





「全く、大将は人使いが荒いねぇ。」
プレアデス城1階の大鏡から姿を現したエースが、溜め息とともに愚痴をこぼす。
炎の英雄ゲドを筆頭に、クイーン・エース・パーシヴァル・ジョー軍曹・ジョアンが
アルマ・キナンの村へ遠征に出かけたのだが、帰りに立ち寄ったクプトの森で相当な数の
モンスターに出くわし、連戦の末にようやく瞬きの手鏡を使って戻ってきたらしい。
「何言ってるのさ、『アルマ・キナンに行くなら是非ついて行きたい!』って言ったくせに。」
クイーンが疲労感を押さえ、ちらりとエースを睨んだ。
「いや、まぁ、それはそうなんだけど・・・。」
肩をすくめてみせるエース。
「手鏡を使うのが遅すぎたな。しかもサポート無しで、あの連戦は無謀だ。」
疲労のためか、パーシヴァルの口調は辛辣だ。
「まぁまぁ、こうして無事に戻ってこれたんだから、いいじゃないか。」
なだめるのは、ダッククランの歴戦の勇士、ジョー軍曹である。
「そんじゃ、お休み。俺は昼寝させてもらう。」
ジョアンは軽く手を振り、早々に立ち去ってしまった。
「それじゃ、俺達もここで解散するか?」
軍曹がゲドを見上げる。
「・・・そうだな。」
ゲドが口を開いた時。
「あ、皆さん、お帰りなさい。お疲れさまでした。」
2階の通路から、プレアデス城の若き城主であるトーマスがひょっこり顔を見せたかと思うと、
階段を駆け下りてきた。
「ただ今戻りました、城主殿。」
先ほどまでの疲労感と刺々しさはどこへやら、柔らかな笑みを見せるパーシヴァル。
「・・・ああ。」
普段どおりの、多くを語らないゲドらしい返答。
「おっ、トーマスじゃないか。城の方は変わりないか?」
気さくにトーマスに話しかけるのはジョー軍曹。
「さすがに疲れた・・・。カニの大群には、当分会いたくないね。」
「エースの場合は自業自得だよ、全く。まあ、何とかみんな無事に戻ってきたよ。」
エースはトーマスに泣き言を言い、クイーンはエースに突っ込みつつもトーマスに笑顔を見せる。
それぞれが好き勝手にトーマスに話しかける。
「は、はい。あの、必殺の封印球は見つかったんですか?」
「・・・・・ああ。何とかな・・・。」
アルマ・キナンの道具屋で、掘り出し物として扱われている必殺の封印球を入手するのが、
彼らの今回の目的であった。
「良かった。あとは大地の封印球と、湯豆腐のレシピと・・・」
トーマスは左手に抱えていた本の間から、『みんなの欲しい物リスト』を取り出した。
ここに、城の住人が意見を出し合った、必要なアイテムなどがピックアップされている。
「明日はどうするんだ?」
リストをのぞき込むジョー軍曹。
「シンダルの遺跡にでも行くか・・・。」
少しの間考え、天井を睨みながらゲドが呟く。
「大将、明日は休ませてくださいよー!」
言うが早いか、エースはゲド達の輪を離れ、ユイリ達の方へふらふらと歩いていった。
「・・・・・ふぅ。」
冷めた視線をエースの背に浴びせるクイーン。
ゲドは欲しい物リストに視線を戻した。そして、頭の中では明日のメンバーを選考する。
ふと、リストを真剣に見つめるトーマスが視界に入る。
「明日・・・一緒に行くか?」
トーマスを正面から見つめ、ゲドが尋ねる。
「え・・・僕、ですか?」
クイーンとパーシヴァルが揃ってトーマスの方に向き直る。
一瞬だけ遅れて、ジョー軍曹が顔を上げる。
そこには、張りつめた空気が満ちていた。
(こ・・・こいつら・・・またか・・・。)
軍曹は嫌な予感がした。そして、彼のこれまでの経験から、その予感は
的中するであろう事も瞬時に理解した。
「で、でも、僕は足手まといに・・・。」
「おまえの能力は買っている。明日、忙しくなければの話だが。」
無理はしなくていい、その意も含めたゲドの口調だった。
トーマスは、自分がみんなの足手まといになることを懸念したが、しばらく考えた末に、
「わ・・・わかりました。明日、同行させてください。」
と申し出た。実は、みんなと遠征に行きたいという気持ちがトーマスにもあったからだ。
「・・・ああ。」
ゲドが頷いたその瞬間。
「俺も明日は同行させてもらう。」
「じゃあ、私も明日は一緒に行くことにするよ。」
パーシヴァルとクイーンがゲドに向かって宣言したのは、ほぼ同時だった。
「おや、あなたは今日の遠征でお疲れなのでしょう。心配せずとも、城主殿の身は俺が守るから、
明日はゆっくり休んだらどうですか?」
「あんたの方こそ、無理することはないよ。トーマスは私が面倒見るからさ。」
2人とも笑顔を見せてはいるが、その口調は氷の如く冷たく、鋭い。
(やっぱり・・・・・・。)
軍曹はがっくりと肩を落とした。
(これは、荒れる前に退散するしかないな・・・。)
火花を散らす2人に背を向けたその時。

がしっ!

力一杯腕を掴まれる。
(・・・勘弁してくれ・・・!)
軍曹は天に祈ったが、その願いが叶えられることはなかった。
「・・・軍曹・・・頼む・・・。」
苦虫を噛み潰したようなゲドの表情。
「・・・・・・・・・・・ふぅ。」
こうなったらもう逃げられない。軍曹は、パーシヴァルとクイーンの氷の闘いに巻き込まれる
覚悟を決めた。
(明日は、今日の何倍も疲れるんだろうな・・・。)
軍曹の嫌な予感どおりに、シナリオは進行しているようであった。
パーシヴァルとクイーンは依然として冷ややかなバトルを展開し、よくわかっていないらしい
トーマスはゲドと「欲しい物リスト」を囲んで打合せをしている。
(そして、問題がもう一つ・・・。)
軍曹は、この後起こるであろう事態を想定し、頭を抱えた。



「軍曹!ずるい、ずるいーっ!俺も明日ついて行くっ!!」
「だーかーらー、おまえさんは明日ルシア族長のお使いで大空洞へ行くんだろーが!!」
「でもずるいっ!いつも軍曹ばっかり!俺も明日トーマスさんとシンダル遺跡へ行くんだっ!」
「・・・ふぅ・・・・・もう勘弁してくれ・・・。」
ヒューゴの部屋では、口論とジョー軍曹の溜め息が絶えなかった、らしい。



END


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