きよしこのよる





クリスマス。
遠い異国の、神様の降誕祭。
今日はその前夜、クリスマスイブ。

雪が降り積もるプレアデス城でも、今日は一日お祭り騒ぎ。
宿屋、酒場はもとより、会議室まで貸し切り状態で、
各地で大小様々な宴会が催されている。

「えっと、宿屋の方は大丈夫かな?」
こんな時でも城の見回りを欠かさない、若き城主トーマス。
「こんばんはー。城主さん〜。」
「はい、こんばんは。」
行く先々で声をかけられ、また宴会に引っ張られる。
程々につきあって、宴の場を離れる。その繰り返し。

「トーマス様〜。今日も警備は万全ですぅ〜。」
宿屋では、槍を振り回しながらケーキを食べているセシルを見かけた。
「セ、セシル?!君、お酒飲んだの!?」
「お酒〜なんて〜、飲んでませぇんよ〜。」
「で、でも・・・。」
真っ赤な顔をして抗議するセシルだが、どう見てもお酒を飲んだような・・・。
「そ〜そ〜!!ボク達、お酒なぁんか、飲んでないもぉん!!」
よく見ると、セシルと同じように顔を真っ赤にして陽気に笑っている
シャロンとアーサーがいる。
「僕達、色々なケーキをごちそうになってるんですぅ〜。良い記事書けそうです〜。」
「アーサーまで?これって、一体・・・?」
うろたえるトーマスだが、階段を下りてきたミオがやんわりと声をかけ、謎が解けた。
「あらあら、みんなブランデーケーキの食べ過ぎよ。ミックスジュースでも飲んで
少し休んだらどうかしら?」
「「「は〜〜〜い!!!」」」
どう見ても酔っぱらいの3人は元気よく返事をする。
「・・・・・ブランデーケーキ・・・。」
間違って食べないよう気をつけなくては、と心に誓うトーマスであった。

「トーマスさぁ〜ん、メリークリスマスぅ〜!!」
「わぁっ!?・・・・・と、ヒューゴ君?」
会議室へ向かう途中、背後から急にヒューゴに抱きつかれた。
ヒューゴも相当酔っているらしい。
「えへへ〜、トーマスさ〜ん、これから2人きりでお祝いしようよ〜。」
子猫のように頬をすり寄せてくるが・・・。
「息子よ!ここにいたか?戻るぞ!!」
ハレックがヒューゴの腕を掴み、引きずっていく。
「やだやだ〜!!トーマスさんと一緒にいるんだ〜!!!」
「飲み直すぞ、息子よ。」
だだをこねるヒューゴの叫びを全く聞いていないハレック。
「・・・ハレックさん、お酒飲んでたんだ・・・。ヒューゴ君まで・・・。」
トーマスは呆然とするばかりだった。

会議室は日頃の厳かな雰囲気とはうって変わり、クリスマスの飾りや酒瓶が転がっていた。
「何か・・・すごい。」
呆気にとられるトーマスだが、普段会議の中心にいる人物達が
楽しそうに語り合っている様子を見て、そっと会議室を後にした。

酒場はいつも以上の賑わいを見せている。
常連の傭兵12・14小隊、ゼクセン騎士団はもとより、一見酒場には縁の無さそうな
ケンジ、フランツ&イクのカップルや、聖ロア騎士団までいる。
「さあっ、こんな楽しい日は元気よく体操だっ!!」
「ここで、腕を、振り回すなぁ〜!!」
シバが猛烈に抗議するが、ケンジは周囲の迷惑など気にしていない。
どうやら常に体操していないと、気が済まないらしい。
「お二人さ〜ん、あんまり見せつけないでくれよ〜!!」
「うううううるさいっ!!」
周囲のヤジに必死になって抗議するフランツ。
クリスは、ジョー軍曹と話し込んでいる。
クリスは目に見えて緊張しているが、何となく嬉しそうでもある。
「これはこれは城主殿、ご機嫌いかがですか?」
珍しくエース達と同席にいるパーシヴァルもまた、したたか酔っている。
「こんばんは、パーシヴァルさん。」
「良く来た、トーマス!まぁ座って一杯・・・」
相当酔っているらしいボルスが声をかけるが、パーシヴァルに鬼の形相で睨まれる。
「・・・ってのは冗談だ。まぁ座って食事でもしていけや。」
「は、はい。ありがとうございます。」
以前トーマスは無理矢理エレーンに酒を飲まされ、倒れたことがある。
城内では知らぬ者はまずいない、有名な話。
それ以来、トーマスに酒を勧める者はほとんどいなくなった。
「じゃ、みんなでソーダ飲もうよ!」
「・・・アイラ、相変わらずソーダばかり飲むのか・・・。」
以前アイラに飽きるほどソーダを飲まされた苦い経験のあるエースが、溜め息をつく。
アイラはぷうっと頬を膨らませエースを睨む。
「だぁって、私達お酒飲めないもん!!ね、ね、アラニス達も飲む?」
「「「はーい!!」」」
何故酒場にいるのかは謎である聖ロア騎士団が元気よく答える。
「シバさんもソーダ、飲んでみますか?おいしいですよ。」
「・・・ああ、それじゃ、いただくとするか。」
アラニスの申し出に応じるシバ。実は子供好きでもあるらしい。
「えーっとじゃあ、乾ぱーい・・・じゃなかった、」
「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」

「・・・日記、今日中に書けるかな?」
宴の中で、ふと自分の仕事を思い出すが。
「・・・・・明日でも良いよね・・・。」
みんなの笑い声とたくさんの料理に囲まれ、少しだけ苦笑するトーマスだった。


子供も大人も、種族も関係なく、皆が笑い合える日。
たとえ戦いの中の、束の間の休息であっても。

聖なる夜は、賑やかに更けゆく。



END


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