花の都の熱き戦い!?





「ホホホ、チョロいものだわ!私の美しさが、この町でも証明されるのよ!!」
「勝負は最後までわからぬぞ、グルベルよ。」
「このままではいけませんね・・・モルダビア様に顔向けできません・・・。」
「こっ・・・こいつら・・・何好き勝手なことをっ!!」

コロシアムではセプター同士の激しい戦いが繰り広げられている。
その一方で・・・。

「ネイティオ殿、本当に良かったのですか・・・?」
「何がだい?」
観客席で静かに4名の戦いを見つめる青年。
その隣ではしおしおと項垂れる杖。
「エキシビジョンマッチですぞ!強いセプターと戦う絶好の機会だというのに、
せっかくの招待をお断りするとは!!」
「それ・・・今日何回目だい?」
「何度でも言いますぞ!!ネイティオ殿のためですから!!!」
「まぁ、別に良いじゃないか。」
「良くはありませんぞ!!!
ネイティオ殿にはこの世界の救世主となってもらわねばなりませんからな!
経験を積んで、多くの勝利を収めてもらいませんと・・・・・。」
顔を真っ赤にしてがなる杖・・・ゴリガンを余所に、
ネイティオと呼ばれた青年は至って落ち着き払っている。
「たまには良いだろう?ゴリガン。
街へ着くたびにいろんなセプターに勝負を挑まれて、うんざりしていたところなんだからさ。」
「でっ、ですが・・・・・・・。」
「それに、今回はこの町のお祭りを見に来たんだし。楽しまないとね。」
「・・・はぁ・・・・・・・・・。」
「あっ、メテオだ。これでグルベルさんは苦しくなったね。」
呑気に呟くネイティオに、ゴリガンは溜息を漏らした。
「・・・全く、世界を救うために戦うセプターが、戦わなくてどうするのですか・・・?」


花の都レイントロス。
四季折々の美しい花が町中で咲き乱れることから、いつしか「花の都」と呼ばれるようになった町だ。
冬とはいえ温暖な気候に恵まれたこの町では、毎年この季節に冬の花祭りが開催される。
色とりどりに咲き誇る花と並ぶこの祭りの名物が、セプターによるエキシビジョンマッチだ。
バブラシュカ大陸で名の知れたセプターを招待し、観客に試合を楽しんでもらう。
穏やかなイメージの花祭りには似つかわしくないが、これが意外にも好評を博している。
今年のエキシビジョンマッチの招待状は、ネイティオの元にも届いたのだが。

「何ですかな、それは?」
次の町へ向かって歩みを進めていたネイティオとゴリガンの側に舞い降りたのは、一羽のフェニックス。
その伝書鳩ならぬ伝書フェニックスが届けたのは、一通の招待状。
黙々と封を開けるネイティオと、待ちきれないように覗き込むゴリガン。
「・・・ほほう、セプターのエキシビジョンマッチですか?
これは良い経験となりますなネイティオ殿・・・・・?」
1人満足そうに頷くゴリガンを尻目に、ネイティオは万年筆で「参加しない」という文字を
くっきりと○で囲んだ。
ご丁寧に、「参加する」の文字に大きく×印を付けて。
「じゃ、頼んだよ。」
大人しく待っていたフェニックスの左足に招待状の返事を括り付けると、
了解したと言いたげに一声鳴いて、燃えるような紅の翼を羽ばたかせて去っていった。
「な・・・何故ですかネイティオ殿っ!?せっかく腕を上げるチャンスだというのに・・・!!」
「別に良いじゃないか。」
「良くはありませんぞ!!!」
「・・・でも、レイントロスの花祭りか・・・。一度行ってみたかったんだよね。」
「ネイティオ殿・・・何を呑気な・・・・・。」
ネイティオに食って掛かるゴリガンだが、だんだん声に勢いが無くなってくる。
「よし、じゃあ僕達もレイントロスに向かおうか。花祭り、楽しみだなぁ・・・。」
のほほんと笑みを浮かべて歩き始める青年の背に、ゴリガンは恨みがましい声を投げつける。
「ネイティオ殿〜!!!」


今が寒さ厳しい冬だということを忘れさせてくれる程、レイントロスの町は気候穏やかで快適だ。
街は祭りを楽しむ観光客と地元の人間で賑わっている。
「さて、まずはどこかで腹ごしらえして、西の公園へ花畑を見に行こう。」
1人にこにこと機嫌良さそうに歩くネイティオ。
一方のゴリガンはとぼとぼと歩みが遅い。
ネイティオの声に言葉を返す元気も無いようだ。
やれやれと肩を竦めると、ネイティオは言葉を続ける。
「・・・・確か、エキシビジョンマッチは夕方からだったよね。今後のためにも、試合は見ておこうかな。」
がばあっ!!!とゴリガンが顔を上げる。
「試合には出ないよ。出ないけど、他人の戦い方は見ておいて損は無いだろうからね。」
「そうですぞ!そうですとも、ネイティオ殿!!!」
ようやくゴリガンの表情が明るくなる。
「・・・あら、誰かと思ったらネイティオじゃないこと?」
ふいに、背後から聞き慣れた声が。
この高飛車で高慢な口調は・・・・・。
「やあ、今日はグルベルさん。」
「これはこれはグルベル殿。」
「たまには他の町の人々に、私の美しい姿を拝ませてあげようと思ってね。」
世界征服のため、森に迷い込んだ旅人の姿を木に変え、
「美しき森ビスティームの魔女」と恐れられたグルベルであったが、
今では心を改め、森に迷い込んだ人には親切に道を教えているらしい。
事実、グルベルの立ち居振る舞いは文句の付けようがないくらい完璧である。
美女と呼ぶにふさわしい女性ではある。
「あなたもこの祭りに?・・・ってことは、やはりエキシビジョンマッチに出場するのかしら?」
「いえ、僕は観戦です。」
「まあ・・・そう。もしかしたらまたあなたと勝負できるかも・・・って期待していたんだけどね。
今度こそあなたに勝って、私の美しさを証明させようと思っていたのに、残念だわ。」
「それは、ご希望に添えずにすみません。」
「別に謝る事はないわよ。そうだ・・・今、時間あるかしら?」
白磁のような白く細い手を顎に添え、考えるような仕草を見せるグルベルは、確かに美しい。
もっとも、この麗しい容姿の裏には意外な本性が隠されているのだが。
「ええ、特に急ぐ用事はありませんけど。」
「だったら、ちょいと付き合いなさいよ。
この近くに、とっても良い紅茶を淹れるお店があるのよ。
特別に、この美しい私と同行する許可をあげるわ。」
「ありがとうございます。」
下手にグルベルの機嫌を損ねると後が怖いということをネイティオはわかっているので、
ここは大人しく話に乗ることにした。
グルベルとネイティオ、そしてゴリガンが店に向かおうとしたその時。


「見つけたぜ、ネイティオ!!」


こちらも、また聞き慣れた声。
・・・といっても、もういい加減聞き飽きた声とも言えるが。(ゴリガン:談)

「さあ、この俺と勝負だ!今日こそは貴様に勝つ!!」
街中であるにもかかわらず、威勢良く戦いを挑む男。
紛う方なし。竜眼のゼネスである。
「やあ、今日はゼネス。君もこの祭りを見に来たのかい?」
「そんな訳あるかっ!!貴様に勝つためにここまで来たのだ!!!さあ、俺様と戦えっ!!!」
相変わらず、にこやかに微笑むネイティオ。
のほほんとしたペースにすっかり調子を狂わされ、肩で息をしながらも懸命に食って掛かるゼネス。
「ちょいとお待ちなさいな。ネイティオは、これから私と優雅なお茶の時間を過ごすのよ。
邪魔しないで欲しいわね。」
あくまでも優雅な振る舞いを忘れないグルベルだが、声は刺々しい。
「うるさいっ!俺様の邪魔をするなっ!!」
「んまぁ、相変わらず無粋な男ね。」
「貴様こそ、この俺の邪魔をするなら、その化けの皮を剥いでやるぞ!」
「キィ〜ッ!!この美しい私に向かって、化けの皮とは失礼ではなくって!?」
今にもカードを抜きかねないギスギスした雰囲気となってきたが、ふとネイティオが2人の間に割って入る。
「ところで、ゼネス・・・君はエキシビジョンマッチに出るのかい?」
「当たり前だ!!この俺様が大陸一のセプターであるためには、
どんな勝負も挑まなくてはならないからな!」
自信満々に答えを返すゼネス。
「・・・・・こういうところ『だけ』は、ネイティオ殿もゼネスの奴を見習って欲しいものですな・・・。」
ぼそぼそと呟いたゴリガンだったが、しっかりとネイティオに聞こえてしまった。
「それなら、ゼネスに救世主になってもらえば良いのに。」
「そんなことできますかっ!?あ奴に世界を任せられますか!!
そのようなことをしたら、このリュエードはおしまいですじゃ!!!」
「言いたい放題だな、貴様ら!!!」
ひそひそ話の筈が、しっかりとゼネスの耳にも届いていたらしい・・・。
「試合に出るんなら、こんなところで魔力を浪費しちゃいけないよね。」
素知らぬ振りで、穏やかに話しかけるネイティオ。
「ふん、余計なお世話だ!!・・・まぁ、良い。試合で貴様を叩き潰せば良いことだからな。」
「僕は試合に出ないよ。」
「な・・・・・何だと〜っ!!!??」
呆然とするゼネス。
がっくりと肩を落とし、大地に膝をつく。
「こ・・・これでは・・・俺様は何のためにこんな田舎町へやって来たのだ!?
まるで無駄足ではないかっ!?」
「・・・ちょいと、さっきから聞いていれば、ずいぶんと好き勝手なこと言ってるじゃないの?」
怒りのオーラを纏わせて、今度はグルベルがネイティオとゼネスの間に割り込む。
「あなたなんか、この美しい私の踏み台でしかないということを、試合で証明してあげるわ。」
「フン、面白い。この俺様に勝つつもりか?」
「あなたこそ、この華麗で優雅な私に勝てるかしら?」
早くも、バチバチと火花を散らす2人。
「これは、楽しそうな試合になりそうだね。」
「・・・・・ネイティオ殿・・・・・・。」
どこまでも呑気なネイティオを、未だ諦めきれないゴリガンが不満そうに睨み付けた。



夕焼けに照らされた雲が赤々と空を漂っている。
コロシアムは、セプター同士の熱い戦いを今か今かと待ちこがれている大勢の観客で埋め尽くされた。
その観客の中には、ネイティオとゴリガンの姿も。
「本来ならばネイティオ殿もこのステージに・・・・。」
「あ、ゴリガン。参加者が出てきたよ。」
ゴリガンの呟きが始まるやいなや、ネイティオは話題を逸らした。
コロシアムの照明を浴びて入場するセプター達。
竜眼のゼネス、ビスティームの魔女グルベル、そして偉大なる魔導師ホロビッツと邪教の神父ベルカイル。
「これはこれは・・・なかなか愉快な戦いになりそうだね。」
眼を細めてステージに立つ4名に視線を送るネイティオ。

「まさか、貴様らと戦うことになるとはな・・・。
まあいい。いずれにせよ俺様がこの試合を制するのだからな。」
他の3人を一瞥し、ゼネスはほくそ笑んだ。
「あなたのそのにやけ面、この美しい私のクリーチャーでギッタンギッタンにしてやるわ!」
「グルベル・・・お主何があったのだ?」
「私の勝利は、モルダビア様の勝利。必ずや、愚民共に思い知らせてあげましょう。」
4人とも、己のテンションを高めている模様。
観客の声援が飛び交う中、エキシビジョンマッチが開催された。


序盤は、地道に火の土地を獲得したホロビッツが有利に試合を進めた。
追いかけるグルベルは、守りの堅いストーンウォールやウーズを配置した土地を素早く地属性に変える。
ベルカイルは手札になかなかクリーチャーが出てこなかったので、土地取りに大きく出遅れた。
イビルブラストやマジックボルトで他セプターの邪魔を図るが、上位2名を阻止するまでには至らない。
ゼネスは土地取りこそ順調だったが、土地の属性に合わせたクリーチャーを置き換える前に
グルベルやホロビッツに奪われてしまい、こちらも苦しい戦いとなっている。

「ホロビッツ、その危険な領地は頂くわ!お出でなさい、ガーゴイル!!」
アイテムカード・モーニングスターを加えて攻撃力を上げたガーゴイルが、
連戦の末体力を削られたゴーレムの土地に挑む。
ホロビッツはゴーレムの体力を補強するためのアイテムを持っていない。
ゴーレムはガーゴイルのモーニングスター一振りで、呆気なく潰された。
「くっ・・・・・やりおるわグルベル。」
高額領地を奪われ、ホロビッツはペースを乱されるが。
「しかし、ここから立ち直ってこそ、真のセプターよ・・・。」
ホロビッツは不敵に微笑んだ。

「モルダビア様、私に力をお与えください・・・。」
ようやく手札にクリーチャーが巡ってきたが、土地取りに出遅れたベルカイルが巻き返すのは難しい。
こうなったら、一発逆転に賭けるしかない。
まだ手札に現れていない禁断のカード・アンサモンで、グルベルかホロビッツの高額領地を崩し、
その土地を得ることに専念するしかないだろう。
一方、同じく序盤は苦しい戦いを強いられたゼネスは、強烈な攻撃アイテムとマジックボルトの駆使で、
何とか上位2名に食いついている。
焦らなければ、手順を間違えなければ、勝つチャンスは大いにある。
「フフフ・・・今は浮かれているがいい。最後に勝つのは、この俺様だ!!」

「ふうん・・・なかなか良い試合だね。」
満足そうに戦いの様子を眺めるネイティオ。
「僕だったら、デスクラウドとかエクスプロードとかは使わないけどね。
こうして見ると結構有効なカードなんだね。」
「ネイティオ殿・・・楽しそうですな。」
ようやく機嫌が直ったらしいゴリガンに、ネイティオは微笑みを返す。
「ああ、楽しいよ。他の人の戦いって、色々参考になるよね。
僕が普段使わないカードでも、こういう有効な使い方があるって教えてもらえるし。」
「成る程。そういう考え方もありますな。」
「だよね・・・おや?」
ステージの異様な雰囲気に、ネイティオは視線を移す。

ゼネスが召還したケルベロスが、グルベルの土地に乗り込んだ。
迎え撃つは、地属性では最強に近い防御力を誇るストーンウォール。
しかも土地レベルは最高値まで高められている。
「ムダよ。大人しく、この美しい私に通行料を払えば良いのに。」
「・・・フン。それはどうかな!?」
「・・・なんですって!?」
ケルベロスは、一回の戦いで2段攻撃ができる。
しかも、ケルベロスは手ぶらではない。
強力な武器クレイモアを携えている。
「・・・ちょ・・・ちょっと待ちなさいよ!!」
「待てるかっ!!!」
強烈な2段攻撃に、不動の壁として立ちふさがっていたストーンウォールが消滅した。
「キィ〜ッ!この私の土地を奪うなんてっ!!」
「ハハハッ、これで貴様も終わりだな!!!」

ゼネスの言葉どおり。
目標魔力に到達したゼネスが城に戻ったことで、試合の幕は下りた。
「ふん・・・やはり貴様らでは話にならん!!我が宿敵は、やはり唯一人・・・!!!」
激戦でボロボロになりながらも、握り拳を固めてゼネスは会心の笑みを浮かべた。
観客からも、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。


「すごい戦いだったね。」
ほおっと息を吐いて、ネイティオが感嘆の声をあげる。
「全くですな。それにしてもやはり私は・・・・・。」
「ゴリガン、もうその話は止めようよ。どうせ、これから旅の途中で嫌でも戦わなくちゃならないんだから。」
「そっ、それはそうですが・・・・・まぁ、確かにそうですな。
ゼネスなどは、またしつこく勝負を仕掛けてくるでしょうし。」
「そうかもね・・・。じゃあ、先を急ごうか。」
「よろしいのですか?皆に声をかけなくとも?」
「いいんじゃない?またいずれ会えるよ。」
「・・・そうですな。」
観客席を離れ、ネイティオとゴリガンは次の目的地に向かって旅を再開させた。


「ネイティオ!!!次に戦う時こそ、貴様の最期と思え!!!」
観客席に向かってゼネスが吼える。
言葉を投げかけた相手は、既に観客席にはいないのだが・・・。



END


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