ようこそ、劇場へ!番外変2(幻水3)
「このにわをみなさい。」
劇団「炎の運び手」の人気演目、『帝国の愛』。
今回は、奇を衒ったメンバーで演じられている。
(・・・・・ふう。いくらこの城の収益を増やすためとはいえ、やはり演劇は性に合わぬ・・・・・・。)
赤月帝国皇帝バルバロッサが黄金竜に姿を変える。
クリスの出番はここまでだ。
煙幕に紛れてステージから退場し、黄金竜役のケンジと入れ替わる。
「・・・やれやれ・・・。」
舞台袖で、劇の様子を窺う。
(それにしても・・・今回の配役は一体・・・・・?明らかに何かを狙っているとしか思えぬのだが・・・・・?)
そもそも、人間(ケンジ)が黄金竜役というのは・・・無理がないか??
主人公も犬(コロク)だし・・・・・。
しかし・・・・・。
ミルイヒ役の・・・軍曹殿は・・・いつ見ても良い。
ジョー軍曹の一挙手一投足を見逃すまいと、クリスは食い入るように舞台を見つめた。
「劇団・炎の運び手」と言っても、演技については素人揃いだ。
しかし、意外にも演技の素質がある者、演技は全く出来てないが舞台に立つだけで絵になる者、
目も当てられないくらい演技が下手な者など、様々なメンバーによる劇は連日大盛況だ。
時折大ブーイングを招くこともあるが、日々こうして多くの観客が劇場に足を運んでくれているので、
演じる者も気合いが入る。
クリスは演技が全く出来ていないが、『銀の乙女』と呼ばれる所以であるその麗しい容姿から、
多くの固定ファンを獲得している。
主催ナディールもその事を理解しているので、出演を渋るクリスを舞台に上げるため散々苦労してきている。
今回も、ナディールに押し切られた形で舞台に上がった。
もっとも、クリスにとってはミルイヒ役がジョー軍曹だから、というのが主な理由なのだが・・・。
物語の山場である、ミルイヒと黄金竜の対決。
鮮やかな剣捌き・・・もといダックハルバード捌きで、黄金竜を斬りつける。
(軍曹どの、今日も素晴らしい身のこなし・・・。
ふかふかの羽毛はとても柔らかくて温かそうだ・・・。)
うっとりと舞台を見つめるクリス。
クリスを心から敬愛している、「誉れ高き六騎士」と呼ばれる5名が今のクリスを見たら、
果たしてどんな表情をし何と言うか・・・・・。
そして、ミルイヒ最後の台詞。
演じる者によって様々なアドリブが飛び交う名(迷)場面だ。
「俺は羽毛を繕うから・・・。」
(ぐ・・・軍曹どの!何て素晴らしい演技・・・!!
し、しかもあのふかふかの羽毛を繕うとは・・・!!!)
・・・舞台袖には、熱に浮かされたようにぽーっと見惚れるクリスが立ち竦んでいた・・・。
End