2.ススキ野原(幻水4:トラヴィス&4主)





来るべき戦いを目前に控え、一人でも多くの仲間を捜しに群島諸国を渡り歩く日々も、
そろそろ終盤にさしかかっている。


太陽が西へ傾きつつある時間帯。
空は徐々に夕闇が濃くなってきている。


すすきが茂る丘に寝そべり、トラヴィスは変わりつつある空の色をぼんやりと眺める。

・・・この島は良い。静かで、時間の流れも穏やかに感じられる。
あの船の中はどこも騒々しいからな・・・。
唯一、ネコボルト達がいる部屋だけが、心穏やかに過ごせる場ではあるが。

しかし、面倒事を好まぬ筈の自分が、今では群島諸国同盟軍の一員とはな・・・。



「・・・・・トラヴィスさん?」
ためらいがちにかけられた声。
寝ころんだまま見上げると、そこには、少し困ったような表情を浮かべた少年が。
「・・・そろそろ食事の時間だって、宿屋の女将さんが。」
「・・・そうか・・・つい気分が良くて・・・。」
上体を起こし、大きく伸びをする。
「眠っていたんですか?」
「いや、そうじゃない。ただ・・・ここは静かで落ち着く。」
「・・・・・ふふ、トラヴィスさんらしいですね。」
覗き込むように見つめてくる、柔らかい笑顔。
つられるように、笑みを返す。


他人に関わる事を嫌う性分なのに、目の前の少年に対してだけは例外らしい。
初めて出会った時に怒らせてしまった・・・という負い目を感じているからだと、
最初は思っていたのだが。

いつの間にか、深い海の色に似た瞳を持つ少年に惹かれていた。


彼の背負う宿命は想像以上に、重い。
自分にできる事はたかがしれているが、
それでも、ほんの少しでも彼の重責を軽くする事ができれば・・・と、
いつの間にかそんな事を考えるようになっていった。
だからこそ、遠征にもついて行くし海戦にも参加する。
面倒事を避けて生きてきた自分には、有り得ないはずの事ばかり。


「・・・なあ、シルベストリ。」
「はい?何ですか?」
「・・・できれば、もう少しだけここにいたいんだが・・・。」
再び、ごろりと横になる。
静かな場所を好むトラヴィスの心情を察したのか、シルベストリはゆっくりと頷いた。
「・・・いいですよ。じゃあ、女将さんに話してきますから、あまり遅くならないでくださいね・・・。」
「いや、そうじゃない。」
「・・・・・え?」
トラヴィスの邪魔をしないように宿屋へ戻るつもりで背を向けかけたシルベストリだったが、
予想外のトラヴィスの言葉にぱっと振り返った。
「・・・少しだけ、ここにいてくれ。」
「え、えっと・・・いいんですか?」
「・・・あたりまえだ。」
「・・・はいっ!」
視線を逸らしながら照れくさそうに告げられる言葉に、
シルベストリはにこにこと、あどけない笑顔を返してくる。
ちらりと視線を向ければ、普段は滅多に見る事ができないシルベストリの表情が。
この笑顔は、自分のためのものだと自惚れても良いのだろうか・・・?


並んで腰を下ろし、トラヴィスに倣うようにシルベストリは大地に寝そべる。
オレンジから藍色へのグラデーションが、一面に広がる。
心地良い南風がすすきを優しく撫で、さらさらと優しい音色を奏でる。

どちらからともなく手を繋ぐ。
空がすっかり闇の色に覆われる前に、仲間達のところへ戻らなければならないが、
今はこの穏やかで優しい時間に身を委ねていたい、と思う。


あと、もう少しだけ。



End


タイトルは、5titles様からお借りしました。


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